
「眠りたいのに、頭の中だけが動き続けている」そんな夜はありませんか。
布団に入った途端に・・・
今日の仕事のこと、誰かに言われた一言、明日の予定mこれから先の心配、「あのとき、ああすればよかった」という後悔などが、次々と考えが浮かんでくる。
ようやく一つの考えが終わったと思ったら、今度は、「もうこんな時間」、「明日起きられるかな」、「あと何時間眠れる?」と、眠れないこと自体が気になってくる。
そして、「早く眠らなきゃ」と焦るほど、ますます眠れなくなる。
そんなこともあるでしょう。
考えすぎて眠れない夜に必要なのは、頭の中を完全に空っぽにすることではありません。
まず考えてみたいのは、「このことは、今夜ここで考え続ける必要があるのか?」ということです。
この記事では、眠る前になると考えが止まらなくなるときに、何を整理し、どう夜を過ごせばよいのかを考えていきます。
夜になると考えごとが目立つことがある
昼間は、仕事や家事、人との会話、移動など、目の前にすることがあります。
ところが夜になり、照明を消して布団に入ると、そうした刺激が少なくなります。
すると、昼間に気になっていたこと、後回しにしていたこと、明日の心配、過去の出来事、などに意識が向くことがあります。
だから、「布団に入ると考えが出てくる」というだけで、「自分は考えすぎる性格だから眠れない」と決めなくてもよいでしょう。
ただし、そこで一つの問題が起こります。
考えが浮かぶ → 答えを出そうとする → 別の心配が出てくる → 時間が気になる → 「早く眠らなきゃ」と焦る → さらに眠れないことが気になる・・・
こうして、最初は仕事や人間関係について考えていたのに、途中から「眠れないこと」まで新しい心配事になる、ことがあります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、不眠が続くと、眠れないことへの不安や緊張、睡眠へのこだわりが強くなり、眠れずに寝床で過ごす時間が増えることで悪循環になる場合があると説明されています。
今考えていることは「今夜答えが出ること」?
布団の中で考えていることを、一度振り返ってみましょう。
「あの人は私のことをどう思ったんだろう」
「明日の仕事はうまくいくだろうか」
「あのとき別の選択をしていたらどうなっただろう」
「この先、何か悪いことが起きないだろうか」
こうした問題には、今夜どれだけ考えても、答えを確定できないものがあります。
一方・・・
「明日持っていくものを忘れそう」なら、メモすれば対応できます。
「明日の集合時間が分からない」なら、確認できる場合があります。
つまり、夜に浮かんだ考えを全部同じように扱わず、
今できることがある考えと、今考えても答えが出ない考えに分けてみます。
「今できること」があるなら、小さく済ませる。
今夜答えが出ないなら、「これは明日の自分に渡す」と区切ってみます。
頭の中だけで覚えておこうとしない
「明日これをやらなきゃ」と思うと、忘れないように何度も頭の中で確認してしまうことがあります。
そんなときは、紙やメモに残してみましょう。
たとえば、「○○さんに連絡する」、「資料の数字を確認する」、「10時に電話する」と書いておく。
長い文章を書く必要はありません。
目的は、考えをきれいに整理することではなく、明日の自分が思い出せる状態にしておくことです。
メモしたら、「これは明日見る」として、今夜の仕事から外します。
ただし、スマートフォンを使うと、そのままニュースやSNSなどを見続けてしまう人もいます。
その場合は、枕元に小さなメモ帳を置いておく方法もあります。
「今考えて、新しい答えが出ている?」と聞いてみる

夜になると、同じ場面を何度も思い返すことがあります。
「あの言い方はまずかったかな」 → 「でも、あの人も少し変だった」 → 「やっぱり怒っているのかな」 → 「あの言い方はまずかったかな」と、一周して元に戻る。
そんなときは、「さっき考えたときより、新しいことが何か分かったのか?」と聞いてみます。
新しい情報があるなら、もう少し考える意味があるかもしれません。
何も増えていないなら、問題を解決しているというより、同じ考えを繰り返している可能性があります。
その場合、「考えちゃダメ」と追い払う必要はありません。
「これはもう一度考えた。続きは明日にしよう」と区切ります。
考えがまた戻ってきても構いません。
戻ってきたら、また、「これは明日」と戻します。
一度で完全に止めることを目標にしなくてよいのです。
「眠らなきゃ」が、その夜一番大きな考えごとになることがある
最初は明日の仕事について考えていた。
でも時計を見ると「0時30分」、もう一度見ると「1時10分」・・・
すると、「あと5時間しか眠れない」、「明日は絶対つらい」、「早く眠らなきゃ」と考え始めます。
ここからは、眠ることそのものが課題になっています。
しかし、眠りは、「今から10分以内に眠る」と決めて、そのとおり実行できるものではありません。
厚生労働省の睡眠ガイドでも、早く寝床に入ったからといって必ずすぐ眠れるわけではなく、眠れないまま長く寝床で過ごすことが、不眠の悪循環につながる場合があるとされています。
だから、「今すぐ眠らなきゃ」より、「眠気が来るまで、眠ることを頑張りすぎない」という考え方も大切です。
眠れないまま寝床で考え続けない
布団の中で・・・
仕事にことを考える、人間関係を考える、時計を見る、明日の睡眠不足を心配する。
これを長く繰り返しているなら、一度寝床を離れる方法があります。
明るすぎない場所で、静かな音楽を聴く、紙の本を少し読む、ゆったり座って過ごすなど、自分が落ち着いて過ごせることをして、眠気を感じたら寝床へ戻ります。
ポイントは、「眠れないから何か有意義なことをしよう」ではありません。
仕事を始めたり、家事を片づけたりすると、今度は夜の活動時間になってしまいます。
目的は、寝床で「眠れない・考える・焦る」を長く続けないことです。
時計を何度も確認しているなら、一度見えないようにする

眠れないとき、「今何時だろう」と気になります。
でも時計を見るたびに、「あと6時間」、「あと5時間」、「あと4時間」と、睡眠時間のカウントダウンが始まる人もいます。
すると、時計を見ることが安心ではなく、新しい心配を作る行動、になることがあります。
心当たりがあるなら、時計を自分から見えない向きにする、スマートフォンを手の届きにくい場所に置くなど、簡単に時間を確認できないようにしてみる方法もあります。
必要なのは、正確に「何時間眠れなかったか」を実況し続けることではありません。
呼吸法は「眠るためのテスト」にしない
ゆっくり呼吸する、体の力を抜く、落ち着く音楽を聴く。
こうした方法で気持ちが落ち着く人もいます。
ただ、
「この呼吸をすれば眠れるはず」 → 「10分やったのに眠れない」 → 「やっぱり今日はダメだ」となると、リラックス法まで新しい課題になってしまいます。
だから、「眠るために成功させる」のではなく、「今この時間を少し楽に過ごす」くらいで試してみます。
眠れたら成功、眠れなければ失敗、という採点をしないことです。
寝る直前だけでなく「考える時間」を少し前へ移してみる
毎晩、布団に入ってから、明日の予定、今日の反省、心配事、を整理しているなら、考える時間を少し前へ移す方法もあります。
夕方や夜の早い時間に、明日やること、気になっていること、今日のうちに対応すること、明日考えること、を書き出してみます。
たとえば、「明日やることは3つ」、「○○の件は明日確認」、「今日これ以上考えても分からないことは保留」、と区切ります。
すると、布団の中で同じことが浮かんでも、「これはさっき考えた。続きは明日」と戻りやすくなります。
夜に考えごとが出てくること自体をゼロにするのではなく、考える場所と時間を、寝床の外にも作っておく、という考え方です。
スマートフォンは「悪者」にするより、自分の使い方を見る
「眠れないのはスマホのせい」と単純に決める必要はありません。
ただし・・・
SNSを見始めると止まらない、ニュースを見ると心配が増える、仕事のメールを確認すると頭が仕事へ戻る、動画を次々見てしまう、という人なら、寝る前の使い方を見直す価値があります。
たとえば、寝床には持ち込まない、仕事の連絡は○時まで、ニュースは夜には見ない、充電場所を寝床から離すなど、自分が眠りにくくなる使い方だけを減らします。
「寝る前は絶対スマホ禁止」という新しい厳しいルールを作るより、「私は何を見ると頭が動き始める?」と考えるほうが実践しやすいでしょう。
「今夜眠れる方法」を探し続けない

眠れない夜にインターネットを見ると、眠れる音楽、呼吸法、ストレッチ、飲み物、入浴法、ツボ、さまざまな方法が出てきます。
一つ試す → 眠れない → 次を試す → また眠れない → さらに検索するというループにはまってしまいます。
こうなると、眠るための方法探しそのものが夜の活動、になってしまいます。
眠れない夜ほど、「何とかして眠らなきゃ」という気持ちは強くなります。
でも、その夜に次々と対策を増やすより、自分が比較的落ち着いて過ごせる方法を一つか二つ決めておくほうがよいこともあります。
「眠らせる方法」ではなく、「眠気を待つあいだを、どう過ごすか」と考えてみましょう。
夜の問題と、昼に考えたほうがいい問題を分ける
眠れない原因になっている考えが、仕事のことや家族のこと、お金、人間関係、将来のことなど、現実に解決が必要な問題なら、「気にしないようにする」だけでは解決しません。
ただし、解決する時間が夜中である必要はありません。
翌日に、誰かへ相談する、必要な情報を調べる、予定を変更する、話し合う、専門家へ相談する、といった行動へ移します。
夜は問題を無視する時間ではなく、「今夜扱う問題」と「明日扱う問題」を分ける時間と考えてもよいでしょう。
「考えすぎ」が昼間にも続いているなら、夜だけの問題ではない
布団に入ったときだけではなく、昼間からずっと同じことを考えている。
仕事中も心配が頭から離れない、一人になると考え続ける、過去の出来事を何度も思い返す、という場合は、睡眠だけを整えようとしても十分ではないことがあります。
その場合には、「なぜ眠れない?」だけでなく、「昼間から何を考え続けている?」にも目を向けてみましょう。
不安そのものや、同じことを何度も考えてしまうことへの対処が必要な場合もあります。
眠れない原因を「考えすぎ」だけに決めない
ここは、とても大切です。
「布団に入ると考えごとをしている」からといって、眠れない原因がすべて考えすぎとは限りません。
睡眠環境、生活リズム、カフェインなどの嗜好品、服用している薬、痛みやかゆみなどの身体症状、睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、不安や気分の落ち込みなど。
さまざまなことが睡眠に影響する場合があります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠の問題には睡眠環境・生活習慣・嗜好品によるものと、睡眠障害によるものがあるとされています。
だから、「自分は考えすぎる性格だから仕方ない」と決めつけないことも大切です。
「何時間眠れば正解?」だけで考えなくていい
睡眠時間には個人差があります。
必要な睡眠時間は、年齢や生活状況などによっても違います。
厚生労働省の睡眠ガイドも、睡眠には個人差があり、ガイドに書かれた内容がすべての人へ常に同じように当てはまるわけではないとしています。
だから、「絶対に8時間眠らなければ」など、一つの数字だけを目標にすると、それ自体が焦りにつながることがあります。
見るなら、どのくらい眠れているかだけでなく、日中の眠気や疲れ、生活への影響がどうなっているか、も一緒に確認しましょう。
眠れない状態が続くなら相談を

数日眠りにくかったというだけで、不眠症と決まるわけではありません。
ただし、なかなか寝つけない状態が続いている、夜中や早朝に目が覚める、眠っても休んだ感じがしない、日中の眠気や倦怠感が強い、集中できず、仕事や家事に影響している、「今夜も眠れないのでは」と強い不安がある。
といった状態が続いている場合には、医療機関へ相談することも考えてみてください。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、睡眠環境や生活習慣などを見直しても睡眠の問題が続き、日中の生活に影響している場合には、医師へ相談するよう勧めています。
また、いびきや睡眠中の呼吸停止を指摘される、脚に強い不快感があり動かしたくなるなどの場合には、別の睡眠障害が関係していることもあります。
「考えすぎだから」だけで済ませず、「寝つけない状態が続いていて、昼間にも影響が出ています」など、実際に起きていることを伝えてみてください。
まとめ|「考えないようにする」より「これは今夜考えること?」と分けてみよう
考えすぎて眠れない夜に、「考えるのをやめよう」としても、次の考えが浮かんでくることがあります。
そんなときは、頭の中を空っぽにしようとするより、「これは今夜考える必要があるのか?」と分けてみましょう。
今できることなら、最小限に済ませる。
明日できることなら、メモして明日へ渡す。
今考えても答えが出ないことなら、今夜の課題から外す。
同じことを考えているなら、「新しい答えは増えたのか?」と確認する。
そして、「早く眠らなきゃ」が一番大きな心配になってきたら、眠ることまで頑張りすぎていないか、にも気づいてみましょう。
眠れないまま寝床で長く考え続けるのではなく、一度離れて静かに過ごし、眠気を待つ方法もあります。
目指すのは、布団に入った瞬間、何も考えなくなることではありません。
考えが浮かんでも、「これは明日」、「これはもう考えた」、「これは今夜答えが出ない」と分けて、今夜の自分が扱うことを減らしていく。
眠れない夜には、「どうすれば今すぐ眠れる?」ではなく、「眠気が来るまで、どうすれば焦らず過ごせる?」と考えてみてください。